前回はⅡ号戦車の組立と塗装について説明をしました。今回はⅡ号戦車の油絵具もどき塗装になります。
🐔前回の記事を下記に載せておきます。参考にして下さい。
【初心者向け】エナメル塗料で行う油絵具もどき塗装(タミヤ 1/35 Ⅰ号戦車 Ⅱ号戦車)~⑤組立てと塗装編(Ⅱ号戦車)~
🐦️今回製作しているポーランド戦線のⅡ号戦車は、2025年現在カタログ落ちしています。フランス戦線のⅡ号戦車は普通に流通しているのでそちらを下記に載せておきます。興味のある方は参考にして下さい。
タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.292 ドイツ陸軍 II号戦車 A~C型 フランス戦線
=🐣前回の問題点と改善方法=
前回のⅠ号戦車では写真1のように付着させたエナメル塗料が薄く残ってしまいました。とくにフェンダーなど凹凸がある部分は、平面部分よりハッキリとエナメル塗料を塗った跡が残ってしまいます。
エナメル溶剤でガシガシ擦れば、薄くはなりますが完全に消すというのは難しいです。平面部分は凹凸がある箇所よりは目立たないですが、それでもうっすらとエナメル塗料を塗った部分に跡が残りました。
写真1
原因は二つ考えられます。一つはエナメル塗料の乾燥が早いからだと思われます。油絵具は乾燥にかかる時間が日数単位なので、分単位で急激に乾燥する事はないですが、揮発成分を多く含むエナメル塗料は分単位で乾燥していきます。
写真2のように車体全体にエナメル塗料を付着させてから、溶剤で拭き取りをすると最初に塗った部分から乾燥が始まってしまい拭き取りの際に塗料がうっすらと残ってしまいます。
改善点としてエナメル塗料が乾く前に拭き取り作業を行う事です。方法としては溶剤を加えて塗料自体の乾燥を遅らせるか、エナメル塗料の付着を細かい範囲に区切って乾燥する前に素早く拭き取り作業を行うという事が考えられます。
写真2
もう一つに原因は表面のツヤにあると思われます。肉眼ではハッキリ見えないですがツヤ消し塗装の表面はザラザラしています。表面のザラザラが光の反射を抑えてツヤ消し面になる訳ですが、このザラザラ面に塗料が入り込んで拭き取りが難しくなると考えられます。
改善点は表面をツヤ有りにするか使用する塗料を光沢にする事です。方法としてはクリアーでコーティング塗装をするか、使用する塗料を光沢に変更すれば良いのですが、どちらも作業後にツヤ消しコーティングをする必要があるため、二度目のコーティング塗装という行程が増えてしまいます。さらに、ツヤ有の状態だときれいに拭き取り過ぎてしまい、塗料が表面に残らないという可能性もあります。
今回は無駄に行程を増やしたくないので、塗料の乾燥を遅くする方向で作業を進めていきます。
=🐣油絵具もどき塗装=
溶剤で塗料を薄め過ぎるとスミ入れのように塗料が流れてしまうので、先に塗装面に溶剤を塗ってから塗料をのせる事にします。さらに塗料の乾燥を防ぐため、面やパネルごとに作業を行う事にします。
まずは写真3のように作業をする面にエナメル溶剤を塗ります。乾燥しないように少し多めに塗って下さい。
写真3
表面に塗ったエナメル溶剤が乾く前に、素早くタミヤエナメル塗料のフラットイエロー、フラットレッド、フラットブルーを写真4のように付着させます。埃っぽくなるのが嫌なので白系の色は加えていませんが、埃っぽくしたり退色した感じを出したい場合は白系の色を加えてみて下さい。
溶剤で表面を濡らしているので縁が滲んでしまいますが、雨垂れやオイル汚れのように形を作りながら行う塗装ではないので気にする必要はないです。
写真4
エナメル溶剤を浸した筆で、表面に塗ったエナメル塗料を薄く伸ばしながら拭き取っていきます。拭き取りの際に、筆を汚れの流れと同じ方向に動かせば、拭き残しの塗料が汚れの流れと同じになるので自然な感じになります。
拭き取りが終了して乾燥させた状態が写真5になります。光の加減でちょっと解りにくいですが、表面に微妙な感じで色が残っています。下地に塗ったエナメル溶剤のおかげで、エナメル塗料を塗った跡が目立たないようになりました。
写真5
光を抑えて撮影したものが写真6、7になります。油絵具もどき塗装を加えた砲塔上面と、加えていない他の部分との違いが解ると思います。
写真6
写真7
車体は面やパネル、ハッチなどで区切って塗装をします。写真8はエンジンハッチにエナメル溶剤を塗ってから、エナメル塗料をのせた状態です。パネルやハッチなどにのせる色の割合を周囲と異なるようにすれば、ハッチやパネルを強調させる事ができます。好みに合わせていろいろ試してみて下さい。
黄色を多く加えた箇所に、青を多く加えると全体が緑っぽくなるので、黄色を多く加えた箇所は青を少なめに加えています。これも好みだと思うので、イメージ通りの仕上がりになるように加える色や量を調節してみて下さい。
写真8
エンジンハッチ部分にのせた塗料を拭き取った状態が写真9になります。
写真9
溶剤が乾燥した状態が写真10になります。
写真10
写真11はエンジンハッチと左側上面に油絵具もどき塗装を加えた状態になります。未塗装部分との差がハッキリ解ると思います。
写真11
全体に油絵具もどき塗装を加えた状態が写真12~18になります。単色塗装に深みが出た感じになります。
写真12
写真13
転輪部分や車体下部は暗くしたいので、黄色を控えて赤と青だけ使用しています。足回りなどの奥まった部分は、油絵具もどき塗装を加えてもあまり違いが解らないので そのままの状態にしています。
写真14
写真15
写真16
フェンダーにも油絵具もどき塗装を加えましたが、エナメル溶剤を先に塗ったため上手く拭き取れたようで、Ⅰ号戦車のように塗料がモールドに残る事は無かったです。排気管はパステル粉で汚すので油絵具もどき塗装は加えていないです。
🐔パステル粉を使用した排気管の塗装方法を下記に載せておきます。興味のある方は読んでみて下さい。
【初心者向け】簡単!20分でできる排気管の汚し塗装①
写真17
油絵具もどき塗装を加えると表面に深みが出た感じがします。今回は白系の色を加えていないので、基本塗装終了後よりも少しだけ暗めの仕上がりになりました。付着させる色や量を変えれば、いろいろな仕上がり具合を楽しめると思うので、興味のある方は 是非試してみて下さい。
写真18
パネルや面ごとの作業はちょっと面倒でしたが、エナメル塗料だけで油絵具に近い表面処理ができたと思います。塗料の乾燥時間や性質が異なるので、油絵具ほどの深みはないかもしれませんが、乾燥時間が短いので20~30分程度乾燥させれば次の行程に移れます。乾燥時間が待てないという人はちょっと参考にしてみて下さい。
また、作業自体はスミ入れの延長線上みたいなものなので、油絵具の表面処理には興味あるけど道具や行程を増やしたくないという人にもお勧めです。
今回はここで終了です。次回は仕上げ作業になります。